商店街が好きだ。
きっと、親が中華料理屋をやっていて商店街の中にお店をかまえていたからだと思う。お店が仲良く横並びになっている間を人が歩いている雰囲気がたまらなく落ちつく。
地元の商店街はいまやシャッター街になってしまっているのだけど、東京の商店街は今でも活気があると思う。
巣鴨の商店街というと、とげぬき地蔵がある「地蔵通り商店街」が一番に挙げられるが、そこよりも駒込寄りの「霜降銀座商店街」が私は好きだ。


観光向けではなく、より生活に根付いたお店がたくさん並んでいる。おじいちゃんおばあちゃんだけでなく、休日は近くに住んでいる家族がこぞって買い物に出てくるのだ。
中でも入口から少し歩くと見える八百屋の「スターフルーツ」はいつも異常な盛り上がりを見せる。


値段が安いのはもちろん、「綺麗なお姉さん、このいちご安くするから買いなよ」と勝手にカゴの中に入れられることもあるくらいフランクな店員さんの大きな声がいつも響いているからだ。

「安いよ安いよ〜!」と活気のある声にみんな足を止めてしまい、ここだけいつも大渋滞をおこしている。
肉であればその近くの、エネルギースーパーたじまが安い。最近は料理をしていないので行っていないのだけど、魚コーナーの水没はもうなおっているんだろうか。いや、さすがにもうなおっているか。
商店街は通るたびに「このお店入ってみたいなあ」と思うお店がいくつかあるのだけど、いつも両手いっぱいにビニール袋を持ってしまうからそれもなかなか叶わない。

そうそう、私は猫を一匹飼っている。地元の山口から、大阪、東京と大学2年のころから一緒に移動してきた相棒。その名も「ばろん」。
ある日、ばろんのトイレの砂がなくて、財布の中身も確認せずにペットフード「コロタン」に買いにきたら200円足らなかったことがある。
レジで渋い顔をしていた私に店主が「いいよいいよこれで」とそのまま200円引いた値段で売ってくれたのだ。
体の調子が悪い中、このためだけに外にでた私にとっては、この優しさは体に染みたし、商店街ならではのこのゆるさに、東京でも肩肘張らずにいられる場所を見つけたような気がした。





駅まで遠回りになのについ足を伸ばしてしまうのは、商店街一帯に流れる「心の拠り所感」を、名前も知らない誰かと共有しあっている、そんなゆるっとした繋がりが心地いいからなのかもしれない。
<霜降銀座商店街>
アクセス:〒114-0024 東京都北区 西ケ原1丁目-55-10
JR駒込駅 東口、北口どちらからも徒歩5分
Vol.1「彼氏と別れた」
Vol.2「商店街がたまらなく好き」
Vol.3「食事が愛を生んで、愛が食事を作る。」
Vol.4「秋になると昔を振り返りたくなるらしい」
Vol.5「台風前のそわそわと恐怖のアンビバレンス」

さどまち
日常や感情を切り取るエッセイスト/写真家
エッセイメディア「MIMIUCHI」を運営。
会社員をやりながら撮影したりエッセイを執筆。

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